岡崎勝の授業

原子力発電と暮らし 未来の私たちを、今、考えよう
【理科・社会・総合 4年生から】

0 授業をはじめる前に
 みなさんは、2011年(平成23年)3月11日に、東北地方の太平洋側で起きた大地震を知っていますね。大きな津波が押し寄せ、約16,000人の人々の命が奪われ、家や施 設、田や畑など多くのものが失われました。
 この地震と津波で、福島県にある原子力発電所で大きな事故が起きました。はじめのころは何が起きたかよくわからずに、発電所が爆発してはいけないと、海水などで 冷やすことくらいしかできませんでした。しかし、すぐに水素爆発が起き、棒の形をしたウランの燃料が溶け落ち、施設は破壊され、中にあった原子力発電所の機械も崩 れ落ちました。今でも、まだ発電所の中や機械などがどうなっているか、わかっていません。どうやって収束させればよいのか、その方法を知っている人もいません。
 さらにそこから、人間だけでなくあらゆる生きものに有害な放射線を出す放射性物質がまき散らされるという大きな事故となりました。
 この事故をきっかけに、私たちは真剣に原子力発電というものを考え直さなくてはならなくなりました。今までも、原子力発電所の事故はあったのです。ところが多く の研究者や政治家、電力会社の人たちは、今回ほど広い範囲に、しかも、取り返しがつかないほどの重大な被害をもたらすことになるとは考えようともしなかったのです。
 しかし、今まで、何人かの市民や研究者は「原子力発電所から出るウラン燃料の燃えがら(使用済み核燃料=原爆がつくる死の灰と同じ)の処分方法が決まっていない」 とか、「事故を起こした時、だれにも制御ができなくなり、どれだけ大きな被害が出るのかを予想できない」「まして世界有数の地震国である日本では絶対にやめるべき だ」などの理由から、「原子力発電は、人間にとってない方がいい」ということを主張していました。
 この授業では、みなさんが住んでいるこの国で、次のようなことを考えてみようと思います。

1 電気はどうやって作られているのか。
2 日本ではどんな発電方法が多いのか。
3 原子力発電ができなくなったあと、電気は不足したのか。
4 放射線を出す力(放射能)を持つ放射性物質は、人間にどんな影響をもたらすか。
5 原子力発電をこれからどうしていったらよいのか。

 標準サイズの原子力発電所1基を1日動かすだけで、1945年8月に広島に落とされた原爆3個分からふりそそいだ放射能(死の灰)ができるのです。
 原子力発電所はすでに日本には55基あります。「ない方がいい」のか「ある方がいい」のか、それをよく考える必要があります。今回の事故が「想定外(予想しなかっ たこと)」だとしても、その「想定外」で大きな事故が起きてしまうのはよくないわけです。そして、これから、2度と起きないという保障もありません。未来を予測す るのはなかなかむずかしいですね。
 この授業は、「原子力発電を減らす方向で社会を作っていくほうがよい」という考えで行っています。ですから、機会があれば、いろいろな考えを聞いてみることをお すすめします。しかし、賛成でも反対でもない立場はありません。それは、考えることをやめることでしかないでしょう。中立の立場というのは、賛成と反対の両方の意見をよく聞きながら、最後は自分で決 めることをいいます。「どちらでもいい」というのは、中立ではなく、無責任といいます。考えることをやめてはいけないのです。
 「これから原子力発電をどうするか」ということを、情報や科学の力を精一杯使って慎重に考えることが必要です。また、科学の限界、つまり科学には、わかろうとし てもわかることができない領域があることも考えなければなりません。
 みなさんも、この授業を受けながら、身の回りのことから順番に原子力発電やエネルギー(仕事をする力)のことを考えてみてください。そして、大人になったときに、 社会人としてできるだけ正しい判断ができるようになってほしいと思います。

つづきは、『一日おもしろ学校ごっこ』本文をご覧ください。


岡崎勝のとびらの言葉   目次のページ